第17章 押しつけられた隠し事
「死にたい」
「おぉ、どーした終一!悩みがあんのか?なら、この器の大きさじゃエベレスト級、百田解斗に言ってみろ!」
「…百田くん、名乗りの言葉を変えたの?」
「いや、この前王馬のアホに「パターンが無くてつまんない!」とか言われたからよ、絶賛お試し中だ!」
死にたいくらいの自己嫌悪に苛まれている自分とは対照的に、どうやら通常運転の百田を見つめ、最原はまた深くため息をついた。
力なく机に突っ伏す友人を見て、また百田が「ヘアセットにはあんまこだわらないワイルドな男、百田解斗に言ってみろって!」と確実に相手に嘘をつくこと前提の名乗りをあげた。
「…相談することすらおこがましいんだ。もう、本当に…絶望的なまでに僕はダサい原」
「おっ、その名乗りはどうなんだ?もうちょっと明るい感じの方がいいんじゃねぇか?」
「バカじゃないの?そんな口上はどうだっていいよ。最原、どうしてそんな生気のない顔をしてるの?」
ズバッと百田を切り捨てた春川が、ここ数日ずっと死人のような顔をしている最原を心配した。
「……僕は、友達に最低なことをしてしまって」
「最低なことって?」
「……聞くに耐えない、最低な話だよ」
「遠慮すんなって!もと1-aの馴染みじゃねぇか!どんな最低な話だろうと、お前がダセェって事にはなんねぇよ。話してみろ終一」
「……百田くん」
その懐の深い友人に感謝しながらも、最原は倒していた上体を起こしながら、首を横に振った。
「…ううん、大丈夫。言わないって、決めたし」
「へぇ、それってなんで?」
「それは…」
ハッとして、最原がそう問いかけてきた相手の顔を確認した。
ニコニコと害の無さそうな笑みを浮かべた王馬は、春川達とは違う座席の通路側に立ち、悠々と最原を見下ろしている。
「ねぇ、なんで?ダッ最原ちゃんは、誰に、どんな酷いことをして自己嫌悪に陥って自殺願望なんか芽生えさせちゃってるのかな?」
「…王馬くんには、関係ないことだよ」
「最原ちゃんってさ、ここぞという時しか嘘が上手く使えないのも残念だよね。もちろん他にも残念なダッ最原命名の所以がたくさんあるけどさ!」
にこやかに、じわじわと居心地の悪さを最原に植え付ける王馬。
その王馬を見て、事情を知らない百田が声を荒げた。