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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第16章 見かけによらない




きっと、彼は今怒っている。
私がきちんと説明しないから。


(…みんな、早く帰ってこないかな)


友達なのに、隠し事をしなくてはいけないというこの状況に罪悪感を感じないわけじゃない。
それでも、隠そうと思ってしまうのは、隠さずに話したその先に、望ましい未来があると想像出来ずにいるからだ。


『……お……そいね、楓たち』


王馬にも、話していないんだよ。
だから、ごめん。なんて。
王馬を引き合いに出して説明することは、「彼が許されていないのに、お前に許されるわけがない」と突き放した言葉に聞こえてしまいそうで、ごまかした。
彼の名前をこの場で出すこともはばかられる。


話題を探していると、彼が私の手を握ってきた。


(……。)


少しだけ震えているその指先を、私は振り払うことができない。
それだけ心配をかけてしまったのだと、深く反省した。


『……ごめんね』


謝ったその言葉が、届いたのか、届かなかったのか。
それはわからない。
彼は握った手に力を込めて、私への熱のこもった目で睨みつけてきた。


『………あ』


彼の雰囲気の変化に、咄嗟に視線を右下にそらすと、彼がはっきりとした声で言った。


「…そらさないで」


ベッドの上で、しっかりと握られた私の手を、彼が少し引っ張った。
なんだか少し危機感を感じて、その手を離そうと、もう片方の手で彼の綺麗な指に触れた。


「…逢坂さん」
『手、離して』


彼のもう片方の手が、私の両手を包み込んだ。
痛いくらいに速まる鼓動を落ち着かせながら、私は身体を無理やり彼と反対方向に倒して、距離を取ろうとする。


「嫌だ」
『お願い、離して』
「嫌だよ」
『……っ離し…!』


両手首を掴んだ彼が、私の腕を自分の方へ引き寄せた。
その力強さに、あぁやっぱり彼も男の子なんだな、なんて、一瞬諦めに似た感情が湧いて、消えていった。


「…逢坂さん」


彼の腕に抱きしめられる形で、耳元で囁かれた私の名前。
私はその震える声に、離して、と冷たい言葉を返した。






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