• テキストサイズ

【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第16章 見かけによらない




「逢坂さん、いつもは校舎の中走るなんてそんなことしないっすよね?今日はどうして、走らなきゃいけなかったんすか?」
『…あー…なんか、校舎が静かすぎて。怖くなっちゃって』
「…なんで怖かったんすか?」
『………んー…なんでかな。たまにない?そういうこと』
「そうそうないっすよ。誤魔化さないで話してください」


彼女は困ったように、こちらを見上げてきた。
日向さんは申し訳なさそうに、そんな逢坂さんを見つめたまま、黙ってしまっている。


「…逢坂さん?」


促すように、彼女の名前を呼ぶ。
逢坂さんは少し浅く息を吐いて、三人のうち誰とも目を合わせようとはしないまま、自身が腰掛けるベッドの布団をじっと見つめた。


『施設長と似てて。学園長が。だから怖くなった』


その短い彼女の返事が、きっと、彼女の精一杯。
側で彼女を見てきた自分には、その仕草と、言葉の選び方、バツが悪そうな横顔という手がかりだけで、理解できてしまった。


「……そっすか。話したくないなら、無理に聞くことはできないんで。俺ら、ただの友達でしかないっすから」


責めるような、それでもどうにか表面上は落ち着かせたような声に、逢坂さんは押し黙ったあと、小さく呟くように謝った。


『ごめんね、天海、最原』
「謝んなくていいっすよ?別に、逢坂さんの心配なんてしてないんで」
「…天海くん、もうよそうよ。…逢坂さん、あのさ…今じゃなくていいから、いつか、聞かせてくれるかな。キミの周りで起こってることや、キミがどうしてそこまで僕たちにそのことを隠すのか」
『……うん。いつか』
「いつかじゃ、なにかあった後じゃ、遅いじゃないっすか。今日みたいなことがまたあったら、俺はもう今みたいに冷静でいられないっす」


今だって、冷静じゃないじゃないか。
そんな言葉を、飲み込んだ。
逢坂さんはさっきよりも小さな声で、ごめん、と謝った。
日向さんが三人の仲を心配してくれたのか、逢坂さんを庇うように、俺が悪かった、と謝罪の言葉を口にした。
その言葉を言われてしまっては、もうどうしようもない。
これ以上彼女を責め立てるわけにもいかなくて、そんな気も起きなくて。


/ 362ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp