第15章 変わり者の幸福論
「あっ、雪!怪我は大丈夫?」
『…楓。大丈夫だよ』
キーボを追いかけてきたらしい赤松が息を切らして、逢坂のベッドに駆け寄った。
赤松は病院で大騒ぎしている王馬とキーボを諌めると、逢坂の方へ振り返った。
「もう少ししたら最原くんと天海くんも来るって」
『え、そんな申し訳ない…』
「それと、春川さんと百田くんもきてくれたよ!」
『…!』
扉をノックして、百田と春川が病室に入ってきた。春川は逢坂のけがを見た後、王馬をじっと睨みつけた。
「…王馬、ちょっと来なよ」
「えーやだよ、春川ちゃんすぐ暴力振るうんだもん」
「………いいから」
「よくないよ」
「おいやめろ、けが人の前なんだぞ?逢坂、お前怪我は大丈夫なのかよ?」
『うん、検査入院して特に何も見つからなければ、帰っていいって』
「そうか!運ばれたって聞いた時はどうなるかと思ったが、良かったなキーボ!」
「…はい、本当に…」
キーボはじっと、逢坂のことを見つめた。
逢坂はその不安げなキーボをベッドの上から見上げて、申し訳なさそうに謝った。
『ごめんね、一人にして』
「……いえ、大丈夫です。赤松さん達が一緒にいてくれましたし、博士は怪我を治すことだけ考えてください」
『………』
(…大丈夫、かぁ。それはそうだよね)
キーボの頼り甲斐のある言葉に、逢坂は複雑な感情を覚えた。
手放しで喜んであげられない自分が、少し鬱陶しく感じてしまう。
『…なんか、天海と最原に来てもらうのも申し訳ないな。ありがとう、みんな、もう帰って大丈夫だよ?』
「そうそう!あとはオレに任せて、邪魔なみんなは帰っていいよ!」
「…あんたと雪を二人きりには出来ない」
「なんで?凶暴な春川ちゃんと一緒にいるよりは安全だと思うけど」
「王馬、利用したいだけでいい加減雪を振り回すのはやめたら?この子はあんたと同じ組織になんか入らないし、闇社会にだっていかない」
「は、春川さんどうしたの?まだ王馬くんのせいで雪が怪我したってわかったわけじゃないんだし…」
「そんなの調べるまでもないよ。実際にこいつの側にいるせいで、雪は何度か殺されかけてるんだから」