第15章 変わり者の幸福論
「……なにそれ。オレだって好きでこんな話してるんじゃないよ。元はと言えば雪ちゃんがオレだけ選んでくれればいい話じゃん」
『…違うでしょ?闇社会で生きるって決めたのは王馬なんだから』
「オレがどうしてこっちの社会でしか生きてこれなかったかなんて知らないでしょ?」
『知らないよ、何度聞いても王馬が隠すから』
「聞いたら雪ちゃんはオレのこと興味なくなるからに決まってるじゃん」
『……どういうこと?』
「オレの過去聞いて、それでもオレの話を笑って聞いてられるほど雪ちゃんは楽観的じゃないし感情の切り替えだって下手でしょ。そしたらオレと一緒にいる時楽しい話ができなくなって、一緒にいたって楽しくないオレになんかすぐ興味が失せるよ」
『………そっか、王馬は…』
ずっと、私の気持ちを疑ってたんだね。
逢坂は、ひどく落胆したような声を出した。
しばらくの間、2人は視線を交わすことがなく。
どのくらい、そうしていたのだろうか。
窓の外で、放課後を告げる学校のチャイムが鳴り響いたのを、遠雷のように聞き流した。