第2章 超高校級のロボット博士
放課後、顔を合わせた天海は普段よりも少しぎこちない笑みを浮かべていた。
狛枝と左右田にそれぞれ自己紹介をし直してわかったことだが、王馬は狛枝と同じように、この1週間だけといわず、遊びに行く感覚で研究棟へ出入りしていたらしい。
「王馬くん、研究系の生徒に友達がいるの?」
「友達かぁ。それはお互いに無理じゃないかな」
「お互いに?」
最後尾を歩く最原と天海の間に、気まずい沈黙が続く。
居ても立っても居られず、口を開いたのは最原だった。
「…ごめん、天海くん。一応君に言われた言葉を何度も考えてみたんだけど、君がどうしてそこまで怒るのかわからない。なんでなのか教えてくれない?」
「………」
天海は最原をじっと見つめ、それは無理っす、と突き放す言葉を選んだ。
「…俺が怒った理由は、俺の経験上に起因することなんで、その経験を話したくない以上は最原君にわかるように話すのは不可能っす」
「……そっか」
「…でも、そんなのってただの八つ当たりされてるのと一緒っすよね。自分で今言ってて、何やってるんだかって呆れたっす。…すみませんでした、最原君に余裕があるんじゃなくて、俺に余裕がなかったんすよね」
自分に言い聞かせるように、天海はポツリと最原に謝った。
そ、そんな謝らないでいいよ、とあわあわしだした最原を見て、天海が困ったように笑った。
「最原君はそんな申し訳なさそうな顔することないんすよ」
「あ、ごめん」
「謝る必要もないっす」
ようやく笑い声が混ざりだした背後の会話に聞き耳を立てていた赤松は、ほっと胸を撫で下ろした。
そして隣を歩く王馬に、いい機会だから、と理由づけして、質問をしてみることにした。
「王馬くん、さっき聞いたんだけど…雪の家を知ってるって本当?」
王馬は赤松を見上げて、うん、本当だよーと言ったあと、数秒もしないうちに、すぐ前言撤回した。