第14章 歪な恋心
王馬は少しだけ微笑んで、答えあぐねている逢坂の唇にキスを落とした。
急に交わされたキスに驚き、赤面したまま見つめ返してくる逢坂。
その表情を見て、王馬は逢坂の腰に回した腕をもっときつく引き寄せた。
「……好きだよ、雪ちゃん」
彼は逢坂を見つめたまま、ゆっくりと囁いた。
その言葉は、逢坂が何度聞きたがっても彼の口から告げられることのなかった言葉だ。
『………っえ…………』
キスをした時より、さらに真っ赤に染まる逢坂の顔を楽しそうに眺めながら、王馬は逢坂を抱きしめ、耳元で何度も囁いた。
好き
大好きだよ
雪ちゃん、大好き
何度も耳元で繰り返される愛の囁きに、逢坂は身体を硬直させ、ただただ抱きしめられることしかできない。
「………ねぇ、雪ちゃんは?」
『……っ………』
「………?」
全く話さなくなってしまった彼女。
王馬はその反応が気になり、少しだけ密着していた身体を引き離して、彼女の顔を見た。
「…………!」
彼女はなぜか、少しだけ泣きそうになりながら、ポツリと返事を返した。
嬉しい、です。
敬語で返されたその返事を聞いて。
真っ赤に染まった彼女の頬を見て。
涙がにじむほど、幸福を感じているであろう彼女の心情に気づいて。
(……ごめん)
王馬は、心の内で懺悔した。