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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第14章 歪な恋心




少し理解が遅れて、逢坂は王馬の言葉の意図を汲み取った。
王馬の才能を信じている以上、彼の身近に身を置くことで、危ない目に遭うであろうことは予想がついている。
しかし、今回の件はただ単に自分の不注意が招いた事故だ。
王馬のせいというのは見当違いな気がする。


(……だからこんなに申し訳なさそうなの?)


少し痛む腕を背中の方に伸ばして、ぎこちなく彼の頭を撫でる。
予想通り頭を振り回され、拒絶された。
ご機嫌な時には撫でてほしがるのに、気分が乗らない時には撫でられたくないというのは、まるで気分屋な猫のようだ。


『…心配かけてごめんね』
「許さないから」
『えぇー……』


(……うーん……)


彼の声色でわかる。
この部屋に飛び込んできてから、今の今まで、全く変わることのない彼の感情をそのままに乗せた低音。
そのトーンで言葉を発する時、王馬はふざけたりすることも、感情を隠すこともしない。
だから彼は、本当に許すつもりがないのだろう。
意地か、決定事項なのかは測りかねるが、このままでは一向に王馬の機嫌は直らないだろうということだけ理解できた。


『…ごめん』
「謝ったって許さないよ」
『…じゃあ、どうしたら許してくれる?』


心配をかけたのは事実だし、このまま放っておく気にもなれない。
今となっては、王馬は逢坂の中で、一番心の比重を占める重要人物なのだから。


「オレと学校を辞めて、組織に入ってよ」
『……それは……』
「オレの側にいるならさ、命の危険に晒されるのだって日常だし、そんな怪我じゃ済まないよ。でも雪ちゃんがオレの組織に入ってくれたらずっと一緒にいてあげられるし、守ってあげられる。こんな目に遭うくらいなら学校なんて辞めちゃおうよ!あの学校に居続ける理由もないよね?名案だね!」
『え?ちょ、ちょっとまって』


王馬は急に背中から離れたかと思うと、逢坂の片手を取り、くるりと体を回転させながら、逢坂の前に立った。
掴んだ手を自身の顔の横に引き、吸い寄せられるように近づいた逢坂の腰に手を回す。
お互いの吐息がかかる距離で瞳を覗き込んだ後、王馬はまた誘いの言葉をかけてきた。


「オレ以外全部捨ててさ、一緒に面白おかしく、こっちの世界で生きようよ」


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