第14章 歪な恋心
『え、検査入院?』
現在地は、運び込まれた逢坂の病室。
希望ヶ峰学園と同じ系列グループが経営するその大学病院は、希望ヶ峰学園の隣に位置している。
学園の卒業生である医師の診断に対し、逢坂は不満をこぼした。
『そんな暇じゃないです』
「あのね、暇じゃなくたってみんなどうにか時間作って検査受けるの。なんともなければ明日帰れるから。はい、ではお大事に!」
『………』
医師団が出て行くと、逢坂は広い個室にポツリと一人きりになった。
備え付けの鏡を見ると、逢坂はまるで重症患者のように頭をぐるぐる巻きにされ、中二病患者のように右眼を眼帯で覆い隠されていた。
その眼帯を興味本位でめくって見たのだが、右眼は吸血鬼のように真っ赤に染まり、傷がついたことに対する防衛機能なのか、眼球を覆っている組織液がゼリー状に固まってしまっている。
一言で言うと、とてもグロい。
『………ぷっ…………』
独りでに笑いが込み上げてくる。
格好も現状も、階段を落ちた理由も引くほどダサい。
この事故の被害者は日向先輩の方だ。
一癖も二癖もある逢坂の友達が、彼を糾弾していないことを願った。
『………今何時?』
携帯の電源を入れ、時間を確認する。
現時刻は14時半過ぎ。
6限目が始まる直前だろうか。
なんだか数十件のメッセージが入っているようだが、どれも確認することはなく、とりあえずキーボに連絡をすることにした。
彼と逢坂だけの専用通信機を起動させ、ベッドに腰掛けながら彼の反応を待つ。
<怪我は大丈夫ですか博士!>
窓から見える校舎を眺めて、身体をベッドから起こして窓際に立ち、通信機に話しかけた。
キーボはすごく不安そうで、逢坂は入学初日から側を離れてしまったことをひどく悔やんだ。
けれど、せっかくキーボが念願の人間と同じ生活に身を置けているからには、自分の不注意のせいで、彼の時間を1時間でも無駄にさせることはしたくなかった。
『…家のセキュリティコードを渡すから、放課後に会いにきてくれるかな』
<……わかりました……>
ありがとう。
そう言おうとした時。
『あ………』
音もなく部屋に飛び込んできた誰かに、背後から抱きしめられた。