第14章 歪な恋心
「…雪が階段を転がり落ちたって、どうしてわかるの?」
「…彼女が階段から落ちた音を、もう一つ下の階から階段を登ってた俺と王馬君が聞いてたんで。誰かがもめてる声が上の階から聞こえてきて、急いで階段を登ったんすけど……その時、衝突音が何回か聞こえてきたんすよ。倒れた逢坂さんの身体の向きからしても、転がったみたいに階段と平行に倒れてたっす。…それに…」
天海は頭を押さえ、眉間にしわを寄せてため息をついた。
「…なんつーか……突き落としたとしか思えない場所に、1人…見かけたことのある人が立ち尽くしてたんすよ」
「…そいつ、今どこにいるの?」
春川の雰囲気がピリ付き、その様子を見て百田が、すかさず声をあげた。
「落ち着けよ、ハルマキ。気になるのは当たり前ェだし、何が正しいかなんてわかんねぇ……でも、まだそいつが突き落としたって決まったわけじゃねぇんだろ?」
「……あの焦り様、無関係とは思えないっすけどね」
天海は視線を斜め上に流し、何かを考えていた後、赤松とキーボ、最原の方を見て、言葉を繋げた。
「俺は逢坂さんに会いに行く前に、予備学科の校舎まで行って、その生徒と話してくるんで、赤松さん、キーボ君、先行っててください。最原君はどうします?」
「……僕は……天海君についていこうかな。逢坂さんの怪我のことも心配だけど、ただ階段から滑って落ちたわけじゃないのなら、1日でもこのまま病院に一人で居させておいて大丈夫か、判断がつかないから。赤松さん、キーボくん、僕と天海くんが病院に行くまで、着替えを取りに行くのは待ってもらえる?」
うん、わかった!と赤松が元気よく返事をして、キーボは何かを考えた後、わかりました、と頷いた。
「……」
荒々しい空気をまとったまま、春川が自分の席へと無言で戻っていく。
その背中を眺めていた百田が、彼女を追いかけて声をかけようとした時だった。