第14章 歪な恋心
集まっていたクラスの面々は、各々安堵の声を漏らし、次の授業の準備に取り掛かる生徒が大半だったが、キーボの周りには、赤松、最原、天海、百田、春川が残った。
「……通信が途切れてしまいました……」
「…とりあえず、目を覚まして今は病院で休んでるってことだよね?良かったー…!大けがしてるわけじゃなさそうだね。……あ、検査入院するなら、私はキーボくんに雪の家に入れてもらって、着替えを取ってこようかな」
赤松は現状を把握すると、すぐに顔の横で人差し指を立て、提案してきた。
その話を聞いて、キーボはうろたえ、窓の外に見える巨大な病院を横目で見た。
「えっ………一度、博士が無事な姿を確認してからでは遅いでしょうか?」
「ううん、立地的にもすぐ隣だし、少し顔を見てから必要な物を持って、また雪のお見舞いに行こっか。大丈夫だよキーボくん!そんなに不安そうにしないで?」
「……」
キーボは困り顔のまま、ご心配ありがとうございます、と呟く。
その元気のない様子を見ていた百田が、キーボの硬い背中を、バァン!と元気づけるように叩いた。
「良かったじゃねぇかキーボ!逢坂が大したことないって言ってんだ。信じてやろうぜ?」
「……逢坂博士は、39度の熱が出ても大したことないと言う人なんですよ」
「あー…そりゃあれだ、風邪は大抵高熱が出ても治るもんだしな」
「熱が下がらない人だって風邪で亡くなる人だっています。全然大したことではないとボクは思います」
「お、おぅ…?」
キーボは百田をじっと見つめ、次に、周囲を取り囲んでいる生徒たちの顔を眺めた。
「……博士の「大丈夫」、「大したことない」という言葉は、その程度を示しているのではなく、周囲を心配させない為だけの言葉です」
「…たしかに、キーボ君の解釈通りかもしれないっすね」
「……どういうこと?私たちが思ってるより、雪の怪我はひどいってこと?」
春川の問いかけに対し、天海は、いやそこじゃなくて、とその解釈を否定した。
「怪我した理由の方っすよ。階段から滑ったなら、尻餅で済みそうなもんっすよね。顔面から倒れたにしろ、勢いよく階段を転がったりはしないはずっす」