第13章 鈍く冷たく赤い
どう言ったらいいんだろうな、と独り言を呟いた後、日向は少し自嘲した笑みを浮かべて逢坂を見下ろした。
「…本当のことだと思うから、だ」
『本当のこと?』
「狛枝は、言い方はムカつくし陰湿だけど、めちゃくちゃ言ってるわけじゃない。才能があるお前と、才能がない俺を区別するのは、当たり前のことだろ」
『………』
「そういうもんなんだよ。逢坂、お前は知らない世界かもしれないけどさ。俺は幼い頃からずっと、お前たち才能がある人間を羨ましく思ってた。そしてその気持ちは憧れの希望ヶ峰学園で過ごすうちに、満足するどころか、どんどん膨れ上がってる」
だからさ、と日向は言葉を続けた。
「……俺は、叶うなら「そっち側」の人間になりたい。超高校級と呼ばれるにふさわしい存在になりたい。だから、お前が俺のことを本当に考えてくれるなら、このプロジェクトに力を貸して欲しい」
日向の瞳は、暗い絶望の中にあっても、一縷の望みを失うことなく、強い光を放っている。
逢坂は学園長室に向かう足を止め、眉間にしわを寄せて日向を見つめた。
『才能がないだけで人生は絶望だと言っているのなら、私はそんな考えには賛同できません』
「それは違うぞ。俺は、絶望の話がしたいんじゃない。希望の話がしたいんだ。才能を手に入れることは、俺の人生の希望だ。自分の人生が絶望しかないなんてそんなことは思ってないけど……でも、俺は憧れてやまないんだ。お前たちのような存在になることが、そのまま俺の人生をもっと明るいものにしてくれる」
『………日向先輩』
「さっきお前と一緒にご飯を食べてたの、学会で話してたロボットだろ?本当にすごいよな、歳下ながら尊敬するよ」
『私は』
「あとのメンバーは、ピアニストに、冒険家…探偵と、総統だっけ。狛枝に何度も聞かされて、もう覚えたよ。総統って想像つかないけど、きっととんでもない才能の持ち主なんだろうな」
日向は自分の想いを言葉にして、しばらく逢坂に一方的に語り続けると、我に返り、また自嘲する笑みを浮かべた。
「…ごめんな、勝手に喋り続けて」
『……いえ』
「逢坂が憧れるものはあるのか?あるとするなら、それってなんなんだ?」
学園長室の前に着き、少し先を歩いていた逢坂は足を止め、日向を振り返った。