第2章 超高校級のロボット博士
また、空気が張り詰めてしまった。
「もー!天海くんも王馬くんも、とりあえず教室の出入り口で騒がないで!最原くんもほら!行くよ!」
クラス中の視線に耐えきれず、赤松が三人を突き飛ばし、ぐいぐいと廊下に押し出した。
険悪なムードの三人に赤松がため息をついた時、その横を、男子生徒二人組が通り過ぎて行った。
「狛枝また今日も来んのかよ?毎日毎日飽きねぇなー」
「うん、だって一般生徒は学会に参加できないから、みんなの完成品をいち早く見ることができないし。もしかしたら今日こそ、逢坂さんがラボから完成品と一緒に出てきてくれるかもしれないしね」
「えっ…あ、あの、待って!今逢坂さんって言いましたか?」
「…え?うん、言ったけど…」
慌てた赤松に引き留められたのは、2-A組に所属する狛枝と左右田の二人だ。
狛枝は険悪ムードの三人を横目で見た後、場を和ませるような朗らかな声で、赤松に微笑みかけた。
「やぁ、キミは…音符のヘアピンにロングヘアー、最原クン達と一緒ってことは…もしかして超高校級のピアニスト、赤松楓さん?」
「え、すごいよくわかりましたね。たしか…先輩たちは逢坂さんと面識がありましたよね。私たち彼女を探してるんですけど、今どこで何をしてるか知ってますか?」
「ん?逢坂は年度末の研究予算の査定に向けて研究棟に引きこもってるぜ。どこにいんのか、周りの奴らに教えなかったのかあいつ」
「ってことは、ずっと学校にいるの?」
天海がジトッとした目で王馬を睨む。
「オレは一言だって、逢坂ちゃんが家にいるなんて言ってないよ」
王馬はにしし、とずる賢そうに笑い、天海はそんな彼を無視して、左右田に話しかけた。
「俺は、逢坂さんの友達の天海です。その研究棟について教えてほしいんすけど、そこは確か研究系の才能を持つ生徒しか立ち入りが禁止されてたはずっすよね」
「いや、立ち入り禁止ってわけじゃなくて、そこに入るまでのセキュリティに引っかかるから、研究棟のセキュリティを通れる生徒と一緒じゃなきゃ出入りできねぇんだ。逢坂は研究棟の個人研究室で引きこもって、一日一、二時間程度しか出てこねぇよ」
「狛枝…先輩は、そこで何を?」
「あぁ、ボクは左右田クンに頼んで、研究を見学させてもらってるんだ」