第13章 鈍く冷たく赤い
「いって、おい狛枝!わかったから離せって!」
「はぁ…日向クンさー、全然わかってないよ。本当にわかってたら、こんなに超高校級の生徒が集まってるこの場に来ることなんて出来るわけないからね」
『あ、あの…やめてください狛枝先輩。別に、私の手首痛かったわけでもないし…!』
「あぁ、ごめんね逢坂さん。日向クンに答えを求めるより、キミに求めた方がもっとわかりやすくて納得がいく答えを貰えるに決まってるよね。…当たり前のことなのにどうして気づかなかったんだろ。ははっ、本当にボクは、愚鈍でどうしようもないクズでしかないよね。あっ、そういえば新しいクラスはどう?楽しい?」
逢坂はつらつらと話し続ける狛枝に返事をするより先に、日向の手首を締め付け続ける狛枝の手を掴み、ゆっくりと引き離した。
「……っ…逢坂さん…」
狛枝は逢坂に触れられたことに頬を少し染めて、ちょっと大人気なかったね、と逢坂に対して謝った。
『…日向先輩、大丈夫ですか?』
「あ、あぁ…大丈夫だ」
『…狛枝先輩、日向先輩は別に嘘なんてついてませんよ。学校側から仕事の関係で特別に声をかけてもらっていて、日向先輩もその一人なんです。だから私たちが一緒にいるんです』
「あぁそうなんだ?ちなみに逢坂さんの口からもその仕事の内容については語れなかったりするのかな」
『はい。日向先輩の現状と、私になんら変わりはありません』
「…ふーん。そっかぁ、大方、プロジェクトの資料作りに協力してるとかそんなところかな?逢坂さんのロボットは人間の平均的なデータを元に作られたものが多いから、なんの取り柄もないただの高校生の日向クンはちょうどいいかもね」
(……狛枝先輩、特別な才能を持ってない人に対してはこんな感じなんだ)
以前、左右田に聞いたことがあった。
狛枝は逢坂の前では無害そうに振舞ってるが、その実、学園の中でも特殊で「ヤバい」奴に違いないと。
話している会話の節々から、狛枝が日向のことを見下していることは明らかだし、会話を抜きにしても、逢坂に笑いかけている時の狛枝は、一切視界に日向を入れようとしない。
手首を押さえて痛がっている日向に対し、まるで興味がないかのように、狛枝は逢坂に夢中だ。