第13章 鈍く冷たく赤い
昼休み。
朝一でご飯食べようよ!と誘ってきていた王馬と、キーボ、最原と、天海、赤松と一緒に学食へ向かった。
自己紹介の件を反省しているのか、珍しく王馬は逢坂と二人きりではないことに反論しなかった。
逢坂は目の前に置いてある温かい定食を眺め、まだ8割を残したところで箸を置き、お茶をゆっくりと飲んだ。
久しぶりに食べた自分以外の他人が作ってくれた手料理が、美味しくないはずないのだが、学園長に呼び出されたことを考えると、食欲が失せてしまった。
「逢坂さん、なんで呼ばれたんすか?キーボ君の関係っすかね」
「逢坂博士、ボクも一緒についていってもいいですか?」
『…んー。多分ダメかも。キーボは、みんなと一緒にいて』
「…わかりました。…あの、ボクはちゃんと高校生らしく振る舞えていますかね?」
「全然大丈夫だよキーボくん!むしろ、あのクラス常識的な人の割合が少なそうな気がするから、助かってるよ」
「それは良かったです」
キーボは嬉しそうに笑い、みんなが食事をする風景を眺めている。
キー坊はさ、もし間違って口の中に物が入ったらどうなるの?という王馬の疑問に対し、キーボは、間髪入れずに吐きます、と答えた。
みんなが和気藹々と話す声が遠のいていく。
ーーーカムクライズル計画に、君の力を貸して欲しいんだ
(…………。)
思い起こされるのは、学園長のあの言葉。
長期休暇中はお茶を濁していられたが、希望ヶ峰での生活を続ける以上、曖昧に事をやり過ごすことはできないだろう。
「雪ちゃん、大丈夫?全然食べてないね」
『…あぁ、うん…大丈夫。ごめん、唐揚げ誰か食べてくれない?』
「逢坂さん、具合悪いの?」
『いや、違うよ。朝ごはん食べ過ぎたみたいで』
こんな下手な嘘、きっと王馬には手に取るようにバレてしまうだろう。
『…とりあえず、学園長の所に行ってくる』