第13章 鈍く冷たく赤い
「……あんたの男の趣味は心配だけど、ロボット研究に関しては応援してる。学校でも仕事でも、なんかあったら相談しなよ、私にできることなら何だってするから」
「ちょっと、サラッと今オレの事貶したよね?春川ちゃんこそ男の趣味見直せば?」
ガッと春川が王馬の首を片手で掴み、彼を軽々と持ち上げる。
ぐふっと息を漏らした王馬は、ギブギブと呟きながら春川の手をパシパシと叩いた。
「おいハルマキ、お前の才能周りにバレんぞ」
「………いいよ、別にどうだって。こいつ始末できるなら」
「やめとけって…逢坂に嫌われたくねぇんだろ?」
「………」
春川は逢坂を少しだけ見つめた後、王馬には目もくれず手を離した。
ゲホゴホと咳き込む王馬は地面に着地し、うわぁあああん春川ちゃんがオレをいじめるよぉおおおと嘘泣きを始め、逢坂に抱きついた。
「あ、王馬くん!だ、大丈夫?なんで泣いてるの?」
頭をぶつけないように、少しかがみながら、教室に入ってきた大男は、元1-aに所属していた獄原ゴン太だった。
その声を聞いた王馬はパッと泣き止んで、逢坂に抱きついたまま首だけ振り向いた。
「なんだー筋肉ダルマとも同じクラスか。逢坂ちゃんとオレの二人だけのクラスで十分なのになー」
「あれっ、泣き止んだ…もしかして王馬くん、嘘泣きだったの?」
「当たり前でしょ。オレが本当に泣く日なんて、肌身離さず持ち歩いてる婚姻届の雪ちゃんの部分の空欄が埋まる日まで来ないよ」
「えっ、2人はケッコンするの⁉︎」
『えっ、なぜそうなるの』
「そうだよ!挙式会場はまだ決めてないけど、海外で豪勢にやりたいよね!」
「おいおいマジで言ってんのか⁉︎逢坂、考え直せって!」
「…ちょっと、そんなの嘘に決まってるでしょ。百田も、こんな茶番に乗らないでよ」
「え、嘘なの?…そうなの?王馬くん」
「嘘じゃないよ!ゴン太はオレの友達なんだから、ハルマキちゃんの言うことなんて信じないでよ!」
「その呼び方で呼ぶな……殺されたいの…?」
春川はもう一度王馬の首を掴もうとして、逢坂に落ち着いて、と止められた。