第13章 鈍く冷たく赤い
なんだか恥ずかしいような、誇らしいような、初めての感覚だ。
『あ、ありがと…』
「もしかして気に入らない?」
『えっ、全然!そんな、ありがたいというか、申し訳ないというか…』
「雪ちゃんって、プレゼントするのもされるのも嫌いなんでしょ?それって、この前話してくれた出来事を思い出すからだよね。そのせいで誰かを特別扱いするのもされるのも苦手みたいだし」
でもさ、と王馬は言葉を続けて、逢坂をじっと見つめた。
「オレは念願の雪ちゃんの彼氏になったからには、資産なんていくらでも注ぎ込んで貢ぎまくるつもりだし、プレゼントは特別な日だろうが特別じゃない日だろうがあげたいし、オレの貴重な時間だって何億時間でも何兆時間でも雪ちゃんに使ってあげたいんだよね」
『……えっ…』
「だから、はやく慣れてくれないと困るよ!オレは雪ちゃんが嫌がったって特別扱いするし、プレゼントだって勝手に贈りつけるし、距離感なんて合わせてあげないからさ。もうオレと死ぬまで別れられない以上、彼女として努力してよね!」
『努力って、どういう…?』
「簡単だよ。オレに特別に扱われたら喜べばいいし、オレからプレゼント貰ったら喜べばいいし、オレが雪ちゃんの側に来たら喜べばいいんだよ!」
『………いつも喜んではいるよ』
「嘘だね」
彼は逢坂の反論に取り合うことなく、ネックレスの先を自身の指先に乗せて、鈍く輝く紫の石にキスを落とした。
胸元に彼の顔が来たことに、少しぎこちなく身体を軋ませた逢坂の表情を、王馬は楽しげに眺めて、言葉を続けた。
「怖がることなんてないんだよ。恋人同士のオレたちの関係に、嘘はないんだからさ」