第13章 鈍く冷たく赤い
(…あれ、もう王馬のことはいいのかな)
逢坂と同じ相手に本命チョコレートを渡したはずの夢野。
イケメンに食いついている彼女の横顔を見ていると、もはやそんな様子は微塵もない様に思えた。
(…ホワイトデー、お返し貰ったんだろうか)
逢坂は、制服から見えない位置で胸元にかけているネックレスのチェーンを、髪に隠れたうなじの辺りから指先で触れた。
仲直りをしたばかりの3月14日。
『……あれ?これなに?』
「オレから雪ちゃんへのお返しだよ!もしオレの許可なしに外そうとしたら、爆発するからね!」
物騒すぎる嘘をつきながら、彼はうたた寝をしていた逢坂の首に、小さな紫色の石のついたネックレスを着けてくれた。
これなんの石?と聞くと、オレっぽいでしょ?と的を得ない返事を返された。
(………たしかに)
逢坂は今までアクセサリーを身につけたことがなく、もちろん、そんなものを贈ってくれる相手がいたこともない。
用意周到に鏡を近くに持ってきていた王馬が、そのネックレスをした逢坂の姿を映して見せてくれた。