第13章 鈍く冷たく赤い
逢坂たちの新しい教室は、2-a組。
新しい教室に向かうと、知っている面々、知らない面々、どちらにしても個性が強そうなメンバーが既に教室に到着していた。
「わぁっ、キーボくんだ!」
「あぁあっ、人型ロボットキーボ!!」
「えっ、あっ…はじめまして」
「今年から編入とは聞いてたけど、同じクラスなんてびっくりだよー。やっぱりテレビよりもリアルの方が地味に二次元の可能性を感じるね!」
「地味ですか…?」
「ね、ねぇ…逢坂…ちょっと、ちょっとだけでいいからキーボのキーボに触らせてよぉ……!」
『キーボのキーボってなに。入間が同じクラスって教育に悪すぎる…!』
クラスに着くや否や、キーボの周りに人集りが出来る。
あれよあれよと言う間に引き離されていくキーボの姿を目で追いこそはすれ、知らない人に囲まれてしまったキーボの元へ、逢坂は近づこうとはしない。
「は、博士!あ、あの…みなさん、あのっあまり触らないでください!」
『…………』
逢坂は両手で拳を作って、ぐっとガッツポーズをした。
ガンバ。
声には出さず、そう心の中でキーボを見送る。
「来たか、最原、赤松!また同じクラスじゃな」
「夢野さんおはよ、一緒みたいだね!またよろしく」
聞き慣れた声がして、そちらを向いた。
魔女の帽子を深くかぶり、自分に割り当てられた座席で落ち着きなく辺りを見渡していた夢野は、見知った二人の姿を見つけて嬉しそうに駆け寄ってきた。
「逢坂も、イケメンも同じクラスなんじゃな!知らん奴ばかり教室に入ってきてそろそろチビる寸前じゃった…」
「えっ、大丈夫?ト、トイレ行ってきなよ…!」
『よろしく、夢野。…イケメンだってさ』
「え、俺のことなんすか?いやいや、イケメンなんて恐れ多いっすよ。これから、よろしくお願いするっす」
「んぁぁ…イケメンなのに性格が良い…こんな優良物件がまだ空いてるなんて信じられんわい…」
「ははっ、夢野さんは褒め上手なんすね」
チョコレート製作で顔を合わせていた二人だが、思い返せば、人見知りの夢野は一度も天海に話しかけていなかった。
恐らくは話しかけたかったのだろうが、「違うクラスの人」というハードルが予想以上に高く隔ったっていたに違いない。
夢野は目を爛々と輝かせ、夢中で天海に話しかけている。