第13章 鈍く冷たく赤い
逢坂、王馬、最原、天海、赤松、そしてキーボの6人で、クラス替えの紙が貼り出されている掲示板の前に立った。
本当に自分の名前を見つけたのかと疑いたくなるほど数秒も経たないうちに、王馬がここぞとばかりに逢坂に抱きついた。
「やったー!今年は雪ちゃんと同じクラスだよ!これで寝ても覚めても昼休みも掃除の時間も半年に一度開催される女子だけの保健の時間も一緒にいられるね!」
『見つけるの早。…ていうか、男女別の保健の時間は絶対にダメでしょ』
『人の目があるから』、と王馬を雑に引き剥がす逢坂の発言を聞いて、「人の目がなかったら許してるんすか…?」と掲示板から視線を外して天海が呟いた。
「わー!やったぁ、雪と同じクラスだー!」
その天海の言葉をかき消すほどの声で赤松が喜び、王馬と反対側から逢坂に抱きついてきた。
『ほんと?やった!』
「えっ。嘘でしょ?」
心底安心した様子で赤松の頭を撫でる逢坂。
同じようで全く意味の違うリアクションをとった王馬は、赤松の発言の真偽を確かめようとまた掲示板を振り返った。
「あ、天海くんも一緒のクラスだね」
「珍しいこともあるんすね、みんな揃って同じクラスなんて」
「最原クンと天海クンも同じクラスですか?知っている方々が多くて安心しました」
「同じだよ。よろしくね、キーボくん」
「はい!よろしくお願いします」
そのまま校舎に向かおうと逢坂たちは歩き始めたのだが、一番最初に掲示板から興味を失っていたはずの王馬が一向に動き出さない。
『…王馬?もう少し見る?』
口を横一直線に結んだ彼は2-aのクラス名簿をじっと見つめ、また笑みを作って逢坂の方を向いた。
「ごめん雪ちゃん、先行っててよ。ちょっとヘマしたヤツがいるみたいだからさ、シメてこないと」
『…ヘマ?』
「HRまでには戻るよ!オレの鞄お願い!」
『えっ、ちょっと!』
笑っているのかいないのか、曖昧な王馬の雰囲気が気がかりのまま、彼は軽い鞄を逢坂に投げてよこして、来た道を駆け戻って行ってしまう。