第11章 過ぎた日をただ思う
逢坂ちゃんへの好意に気づいたのは、彼女が中学にあがってすぐの頃。
小学校の終盤を誰とも話さずに生活してきたツケなのか、彼女は入学早々、「普段はなにをしてるの?」という友達の何気ない質問に「ロボット製作」と答えた。
あれよあれよと言う間に彼女は女子のグループから追い出され、凡人ばかりしかいないクラスの連中に理解されることはなかった。
けれど、ある日。
いつも学校で散々な仕打ちを受けて家に帰ってきていた彼女が、サイズの大きなジャージを着て帰っていくのを見た。
次の日には、そのジャージを貸したらしい男子生徒と連れ立って歩く姿も見かけていた。
遠巻きに彼女を見ていたオレは、その隣を歩く最原ちゃんに嫉妬した。
なぜだろう、と考えて、すぐに思い至った。
(……逢坂ちゃんが誰かと二人きりでいるところなんて、見たことなかった)
逢坂ちゃんは、最原ちゃんと一緒にいるとよく笑った。
(……あんな風に笑うんだ)
花が咲いたような逢坂ちゃんの笑顔。
その笑顔がオレに向けられることなんて、この先一生無いんだと思うと、僅かに胸の奥が痛んだ。
学校でずっと一緒にいて、寄り道もして帰る二人は、どこからどうみても恋人同士のようで。
仕方のないことだとわかっていながら、それでも未練がましく彼女に惹かれ続けた。