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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第11章 過ぎた日をただ思う




『…うん。いつもの癖なんだけど、フェンス登ってたら魔姫に引っ張り落とされた』


いつもの癖を、どうして王馬が知っているのだろう。高校に入ってからは屋上に登ることなどなかったし、小学校でも、中学校でも、学校側には内緒で屋上の合鍵を勝手に作っていたから、自分しか知らないはずなのに。


『…王馬はずっと私を見てたの?』
「そうだよ、間宮ちゃんが死んでからずっとね」


事も無げに話す彼は、珍しく逢坂の隣を歩いていても手に触れてこない。
帰路を進む逢坂についてくるということは、一緒に家まで来るつもりではあるのだろう。


「逢坂ちゃんさ、もしかして考えるのやめたの?」
『…どのことについて?』
「どれってオレたちのことだよ!他に何を考えるっていうのさ」
『んー……』


あぁ、そうか。
違和感の理由はそれだ。


『……王馬、私たち別れてるって知ってた?』
「えっ、嘘でしょ?」


顔面蒼白になった彼の顔を見て、逢坂はなんだかくすくすと笑ってしまった。


『なんか噂が流れてるね。その話、本当だと思う?』
「本当なわけないじゃん、なにそれ!何年も片思いしてようやく付き合って数日で破局なんて絶対認めないよ!」
『王馬が私に愛想をつかされて振られたって話になってる』
「話になってるって、逢坂ちゃんが周りにそう話したんじゃないの?」
『話してないよ。最近王馬が私に会いに来ないから、そういう噂が流れてるらしいけど』


そっか、その噂が気になって会いにきたのか、と逢坂は独り言をつぶやいた。


「でもさ、逢坂ちゃんがオレの事嫌いになったのは確かだよね」


逢坂の目を見る事なく、珍しくうつむいたまま、王馬が言った。


『……んー。…大丈夫だよ』
「嘘だよね。じゃなきゃ、ひと月も放っておくはずないし」
『大丈夫』
「大丈夫じゃなくてさ、好きって言ってよ」
『そう言わないのは王馬も一緒でしょ』
「好きって言って」


目を合わせず、彼は逢坂の手を握ってきた。逢坂はその手を優しく握り返し、ため息をついた。

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