第11章 過ぎた日をただ思う
二人でぎこちない会話をしながら、パフェを食べて。
そのあとは逢坂に連れて行かれるままに、色んな店を見て回った。
いつからか、逢坂の気が済んだところで帰ろうという考えは消え失せていた。
(……あと少し)
今日だけでいい。
ほんの数分、数秒で構わないから。
(………もう少し)
笑った彼女を見ていたい。
自分に声を聞かせて欲しい。
自分のせいでひどく、心も身体も傷つけてしまった唯一の友達。
日が暮れて、彼女がそろそろ帰ろうかという言葉を口にした時。
今までずっと言えずにいた言葉が、堰を切ったように溢れ出した。
「あの日は、ごめん…っ」
振り絞るような声は、数歩先を歩く逢坂に聞こえたらしい。彼女は大きな月に向けていた視線を春川に移し、月光を背に浴びながら、じっと耳を傾けた。
「本当にごめん。もっと早く謝らなきゃいけなかったのに、謝れなくてごめん」
『…ううん、私もごめんね。知らないうちに傷つけたみたいで』
「違うよ、あんたは悪くない。私ずっと…ずっと悔しくて。あんたはロボットの発明なんてすごい才能の持ち主なのに、私は…私は……」
自分は、どうすればよかったのだろう。
気づかなかっただけで、本当は自分にも選択の余地があったのだろうか。
施設の経営は大きく傾いていたし、傾いていなくとも、政府の要請と言われてしまえば、仕事を断った先のことなど目に見えていた。
仕事を始めてすぐの頃。
雪は何も知らずに笑っていればいいと思っていたはずなのに、何も知らず楽しげにしている彼女を見続けるうちに、考えずにいられなくなった。
ーーーどうして私だけ