第11章 過ぎた日をただ思う
(ていうかさ、おかしいよね。なんで天海ちゃんが逢坂ちゃんの隣にいて、彼氏のオレは尾行なんかしてるの?)
「んぁ?王馬ではないか。物陰に隠れて何をしておるんじゃ」
「…かくれんぼだよ!夢野ちゃんもやる?」
おかしいといえば、夢野ちゃんもだ。最近やたら懲りもせずオレに話しかけてきて、好意の片鱗もたまに見え隠れしている。あんなにこっぴどく振ったのに、なぜかまたオレに近づいてこようとする。
「やらん。ところで王馬よ、14日は空いておるか?」
「14日?ちょうど空いてないよ!いやぁ残念だなー、その様子だと、夢野ちゃんにデートに誘ってもらえそうだったのにねー」
「んぁ…残念じゃと、思ってくれるのか」
「ううん、全然。むしろなんで今更って感じだよ。オレ、義理チョコにお返しするほど慈悲深くないしね」
「あ、あれは王馬が脅かすから、仕方なくそう言っただけじゃ!…それに、もう逢坂とは会っておらんのじゃろ?なら、ウチと付き合うことも検討してみればいいのではないか?」
はて。
どうして夢野ちゃんと付き合うことを考えなきゃいけないのか。
「えー、義理チョコは義理チョコでしょ?それに、チョコも貰えない夢野ちゃんからの本命の告白なんて聞くに耐えないよ!あと、少し会ってないくらいで夢野ちゃんを検討って、なんで?」
「ウチの告白はチョコのおまけか…!……んぁ?なんで?…なるほど、まだ失恋の傷が癒えていないんじゃな。よし、ではウチの魔法で元気づけてやるわい!」
「いやいや、なんで?失恋?なんの話」
「んぁ?……赤松が言うておったぞ、二人が別れたみたいじゃと」
「…………………………はぁ?」
赤松ちゃん、どうしてやろうかな。
数秒間考えに没頭していたけど、オレの表情を伺っていた夢野ちゃんが、大きくのけぞったのに気づいた。
顔をすぐに作り直して、夢野ちゃんに笑いかける。
「オレと逢坂ちゃんは別れてないよ」
「…そ、そうなのか?…ではなぜ…」
ーーーバイバイ、逢坂ちゃん
あの言葉、もしかして。
オレが逢坂ちゃんのこと振ったとか、そんなことになっていたりするんじゃないだろうか。
あんな話をしたからには、辺りに誰もいないのを確認していたし、細心の注意を払った。
だとするなら、考えられるのはただ一人。