第11章 過ぎた日をただ思う
好奇心から、オレは数日に渡って彼女を観察することにした。
学校が終わると、彼女は寄り道などせずに都心からほど遠くない広い自宅へと帰っていった。
朝も彼女を見送る家族の姿はなく、何日見張っていても、その家に出入りする人間は彼女ただ一人だった。
初恋ですか、なんて馬鹿なことを聞いてくる部下を黙らせて、彼女の身辺調査をした。
すると、思い出すと吐き気がするあの女が高々と掲げていた卒業校の、希望ヶ峰学園の存在が浮き上がってきた。
「……へぇ、嘘つきじゃないんだ」
なんだか残念。
そう思ったのも束の間、彼女が研究しているという「ロボット」というフレーズに心が踊り、俄然彼女に興味が湧いた。
(…学校から帰って、家から出てこないってことはずっと研究してるか一人でいるかどっちかだよね。学校でも授業で当てられた時しか話してないし、陰キャ確定かな。オレが突然現れても、相手にしてもらえないか警察呼ばれるかだよね。だって間宮ちゃんとそっくりだし)
その頃から、何をしていても彼女のことが頭の片隅にあって、拭い去れなくなっていた。
意味もなく彼女の前に現れて、二人で話してみたいなんていつもいつも考えるようになった。
死んだ人間に瓜二つな人間が、数日も経たないうちに現れたら、きっと普通の子どもなら卒倒するか誰かに話してしまう。
もし彼女がそういった子どもらしい部分を持ち合わせているのなら、確実に組織のことが明るみに出る。
只でさえ、自分のわがままでひと月も組織を不在にしていたのに、その上秘密結社として活動できなくなるなんてことは、なんとしても避けたい。
絶対に叶わないとわかっているからこそ、オレは彼女にますます惹かれていった。
外を出歩いている姿をひと目でも見たいと思うオレとは反対に、彼女はそのうち学校へも出かけることをせず、研究にのめり込んでいくようになった。