第11章 過ぎた日をただ思う
相変わらず人の言葉の裏がわからない単細胞だなぁ、と頭の中で彼を非難したが、八つ当たりに他ならないことも理解しているから、黙っておくことにした。
何より、グリーンピースを押し返されても困る。
「王馬くんは好きなもの全部くれるのに、ゴン太が一つだけじゃダメだよね。ゴン太のから揚げも、もう一つあげるね」
「………」
オレが考えている言葉なんて何も理解しないまま、ゴン太がオレの皿にから揚げをもう一つ置いてくれた。
にこにこと笑いながら、嬉しそうにグリーンピースを食べるゴン太を眺めながら、オレも表面上だけにこにことした笑顔を作った。
「ありがと、やっぱりゴン太は紳士だよ!」
「えっ、ほんと?ありがとう!」
「オレの大嫌いなグリーンピースを文句も言わずに全部食べてくれるんだもん!その漢気に尊敬しちゃうなぁ!」
「えぇっ?嫌いだったの!?」
ゴン太のリアクションには目もくれず、オレはオムライスを口に放り込んだ。
料理系の才能を持つ生徒たちが企画立案調理している希望ヶ峰学園の学食。
美味しくないはずがないのに、食が進まない。
(…逢坂ちゃんのオムライス、美味しかったな)
逢坂ちゃんに拒絶されたあの日から、オレの心は霧がかかったように晴れない。
何をしていても考えてしまうのは彼女との思い出や、彼女のことだ。
(オレの嫌いなもの、料理に出てこなかったし、美味しかったし)
いつ、どこで、彼女に自分のどんな情報を伝えたのか。
オレはそれを全て把握している。
だからオレが嫌いな野菜を言葉にした時も、文句を言った時も、味の好みを伝えた時も、たったの1回ずつしか逢坂ちゃんに教えなかったことを覚えてる。