第11章 過ぎた日をただ思う
どうしてこんなにもうまくいかないんだろう。
照れ臭い愛情表現だってしてきたし、時間だって無理やり作って彼女の側に居続けた。
他の人間には目もくれないで、彼女だけを特別に、仲間よりも大切に扱ってきたのに。
嘘だって吐き続けてはきたけど、それは彼女だからこそ吐くことが出来た嘘だ。
「……あーぁ…」
オレが大げさにため息をつくと、向かいの席で物音を盛大に立てながら昼ご飯を食べていたゴン太がオレを見た。
「どうしたの?王馬くん。何か考え事?」
一年間、いいだけオレに振り回されてきたくせに、まだ食堂でオレを見かけると何も考えずに相席してくるゴン太の寛大さには、尊敬を通り越して呆れてしまう。
それに、子どもよりも拙い食器の扱い方が気になって仕方ない。
子どもの泣きっ面に笑いながら蜂を近づけ兼ねないオレの心に、母性らしき気色悪い感覚を目覚めさせたゴン太。
そんなどうしようもないゴン太はオレを見つめながら食事を続けていたけど、また肘のそばに置いていたコップを盛大にひっくり返した。
「わぁっ!ごめん、王馬くん!」
「あーぁ、何回も言ってるじゃん。少しは学習しろよ。ゴン太は本当にバカだなぁ」
ごめんね、服にかかってない?と、オレの悪口なんか耳には入っていないようで、反論してこないゴン太に、オレはまた少しイラついた。
「…逢坂ちゃんと話したい」
そう呟きながら、学食のオムライスをスプーンでズタボロにし続ける。
食べ物で遊ぶオレの行動を見ていたゴン太は、食べ物で遊ぶのは良くないよ、とつまらないコメントをしてくる。
「逢坂さん?そういえば、最近一緒にいるのを見ないね。なにかあったの?」
「なんだっていいでしょ。ゴン太ごときに話したってオレと逢坂ちゃんがまた仲良くなれるわけじゃないんだし」
「え?仲悪くなっちゃったの?どうして?」
「知りたいならゴン太のから揚げ一つちょうだい。オムライス飽きちゃった」
「うーん……?とりあえず、から揚げあげればいいのかな。はい、あげるね」
ありがと、ゴン太には代わりにオレの大好きなグリンピースを分けてあげるよ!と理由づけして、オレのオムライスの中から摘出していたグリーンピースの群れを、彼のから揚げ定食にぶちまけた。
「え、ゴン太にもくれるの?ありがとう!」