第10章 オレとボクのライアーゲーム
あの日、あの時。
光くんの心を乱すようなことを言わなければと、何度後悔したことだろう。
明日学校に彼が来たら謝ろう。
明後日はきっと来るだろう。
明々後日には、また会えるだろう。
そう思って彼を待ち、5日目。
自宅で発生した不審火によって、彼は誰かもわからないほど黒焦げになり、命を落としたと聞いた。
燃えた屋敷の火元の捜査中、警察が地下室を見つけた。
その地下室の様子と近隣住民の証言により、一人息子だった光くんに対し、世界的な教育者として有名だった母親が、日常的な虐待を行なっていたとマスメディアが報じた。
どうして今まで忘れていたんだろう。
自分を責め続ける記憶を持ったままでは、子ども一人でこの世界で生きて行くには重すぎたからだろうか。
こんなにも、瓜二つな顔をした王馬の側で日々を過ごしていたのに、全く思い出せなかった。
光くんは、転校した先の小学校で出来た最初で最後の友達。
いつも独りだった私に声をかけて、面白い話をしてくれた。
彼と一番仲が良かったと言えば嘘になる。
けれど、確かに私は光くんを友達だと思っていたし、彼もそう思ってくれていると感じていた。
亡くなるひと月ほど前から、彼は様子がおかしかった。
毎日話しかけてくれていた彼が、急に私に話しかけてこなくなったのだ。
けれど私は彼の様子を遠巻きに見るだけで、自分から声をかけに行くことはしなかった。
彼のふとした仕草、笑顔、言動、その全てがまるで別人のように見えて、近づくことができなかった。