第10章 オレとボクのライアーゲーム
息を切らして、階段の踊り場で立ち止まった。
「…ッ!?」
壁に貼られた大きな鏡。
そこには、ボクではない誰かの姿が映っていた。
「……っ誰だよお前、なんなんだよ!なんだよ、そのピエロの仮面…!?」
鏡に映る「ボク」は、見たこともない不気味なピエロの仮面を顔につけていた。
仮面で覆い隠されたその顔が見たいのに、鏡に映る「ボク」は、同じ動きをしてはくれない。
ぼぅっと幽霊のように突っ立って、鏡の中から「ボク」を見つめている。
「……あの子も、お前もなんなんだよ…!?」
見たことがないはずの、その仮面に見覚えがある。
そうだ、その仮面は「オレ」のものだ。
小さい頃お母さんにお祭りで買ってもらった。
なんの祭りだっけ?
そもそもその記憶は誰のものだ?
そんな昔のものをなぜ今思い出す?
いや、今だから思い出すんだ。
「オレ」は間宮光で、その仮面はお母さんに買ってもらったもので、この記憶は確かなもので、「僕」は確かに「オレ」で。
違う。
違う違う違う違う違う。
あの仮面は「オレたち」のものだ。
買ってもらったわけじゃない。
「オレたち」だけが持っている秘密の仮面。
鏡に映る「オレ」が、仮面を外して「ボク」を見た
そして裂けるような笑みを浮かべた口で、こう言った
お前の負けだよ、と