第10章 オレとボクのライアーゲーム
彼女は、何を言い出したんだろう。
ボクがみんなに嘘を?
そんなはずない。
だってそんなことをしたら、許されない。
お母さんに怒られる。
ボクが嘘つきなんて彼女の嘘だ。
だってそうじゃなきゃ、ボクはボクじゃない。
「…う、嘘なんか…ついてない」
『嘘だよ、だってキミは光くんじゃない』
「……え?」
『光くんはどこへ行ったの。なんでキミがここにいるの。どうして誰も気づかないの?キミは光くんじゃないのに』
ちょっと、待って
『なんで光くんになりすましてるの?』
待ってよ
『光くんはどこ?』
待って
『キミは誰なの?』
彼女は真剣な表情のまま、大きなガラス玉のような瞳でボクを見つめた。ボクはその視線に居心地の悪さを感じて、彼女に背を向け、その場から逃げ出した。後ろ手に、彼女への批判の言葉がクラス中から一気に膨れ上がったのを聞いていた。
けれど、そんなのかまっていられない。
頭がいたい。
気持ち悪い。
走って、走って、走って走って。