第10章 オレとボクのライアーゲーム
「やーい、嘘つきー!」
耳に入ってきたその言葉のせいで、ぼんやりとしていた意識が急に戻ってきた。
ボクの身体は大きく震える。周りを見渡すと、まじめに昼休みの掃除をしている1人の女子を、2人の男子が茶化すように取り囲んでいた。
「おい嘘つき、悔しかったら明日、学校にロボット連れてこいよ!」
(……またあいつらか)
嘘つきって言葉は嫌いだ。自分に言われたわけでもないのに、怒った時のお母さんを瞬間的に思い出す。
「ねぇ、嘘つきって決めつけるのやめなよ」
「あ?なんだよ間宮!こいつの言ってること信じんのか!?」
「どっちだっていいです。嘘つきって騒がないでくれませんか。大声出されるの迷惑なので」
「げぇーなんだよ、お前らやたら仲良いよな!もしかしてできてんじゃねーの!?」
「…別に仲良くなんかありません。それより掃除の邪魔、しないであげてください」
特別に、その子と仲が良い覚えなんてない。
むしろその子には、嘘をつくならもっとマシな嘘をつけばいいのになんて、批判めいた感情しか持っていない。
「…キミも、嘘をつくのはよくありませんよ。小学生がロボットなんて、作れるわけないだろ」
きっと、彼女は孤児だから、嘘をつくことが良くないって教えてくれる親がいないんだ。でもだからって、嘘を平気でついて許されるわけがない。
『……なにそれ。なんでそんなこと言えるの?』
「ボクは嘘をつかないから。キミに注意したって別におかしくありません」
『私は嘘なんかついてない』
「いいよ、そんなバレバレの嘘つかなくたって」
『嘘じゃない』
「嘘でしょう?なんでそんなに嘘ばっかりつくんですか?家族がいなくて寂しいからって、嘘ついてまで気を引こうとしないでください」
『じゃあキミはなんなの?どうして嘘つきなのに嘘つきじゃないフリをしてるの』
「……は?」
嘘つき、と呼ばれたことに心がざわつく。言葉にできない焦燥感と、圧迫感が胸の中にもやもやと浮かび上がってくる。
「…ボクまで嘘つきにして何がしたいんですか」
『私は嘘つきじゃない、嘘つきなのはキミでしょ?』
「ボクは嘘つきじゃない、嘘なんかついてない!」
『みんなに嘘ついてるくせに!キミだけには嘘つき呼ばわりされたくない!』