第10章 オレとボクのライアーゲーム
3週間を過ぎた頃。
ふとした拍子に母親に返事を返し、すぐに我に返った。
無意識だった。
いつからかオレは本物の間宮光として思考し、言葉を選び、行動するようになっていた。
(ーーーーーッ!!)
身体中から汗が噴き出した。
信じがたいけれど、その母親の「しつけ」の才能を認めざるを得なかった。
自分がいつのまにか消えていき、あの女の望む人格が自分の中へ上書きされている。
必死に抵抗しても、偽った行動はそのまま自己暗示になり、思ってもない言葉は自分の心を拘束する。
ーーーー自分が自分じゃなくなってしまう
いつか、誰かが言っていた気がする
誰だっけ
オレが言ったんだっけ?
違う、オレじゃない
ボクが言った
ボクじゃない、あいつが言ったんだ
そうだ、確か彼はボクとよく似ていた
けれど思い出せない、誰だっただろう
どうしてボクと出会ったんだっけ
「光、あなたは本当に良い子だわ」
あぁ、そうか、そんなことどうだっていい
「………もっとお母さんの理想の息子になれるように、がんばります」
ボクが誰だろうと、ならなきゃいけないんだ
「嬉しいわ、お母さんあなたのこと大好きよ」
お母さんの「理想の息子」に