第9章 キミとの距離
泣きながら抱きついてくる彼女の頭を撫でながら1-aを振り返ると、話を盗み聞きしていたらしい百田と最原に入間が怒られているのが目に入った。
「オ、オレ様は聞かれたことに答えただけだろー!?」
萎びて泣いている彼女の方へ行き、まぁまぁと百田と最原をなだめる。そして、事を無駄に大きくしてしまった張本人である王馬を見た。
『…捕まえられてるのはなんで?』
「こいつが赤松に謝んねーんだよ」
「謝ったじゃん。記憶違いでしたごめんねーって」
「それが謝ったうちに入ると思ってんのか!」
『王馬』
逢坂に見つめられ、王馬がふいっと視線をそらす。
「オレが勘違いしてたみたいだよ、ごめん赤松ちゃん!」
あくまでも、「間違った」スタンスは崩さないらしい。上目遣いで見つめてくる王馬を無視はできず、すっきりした顔の赤松が、ううん、私こそ大騒ぎしてごめんね、と受け入れた。
(……それにしても)
『ねぇ、王馬を捕まえるって誰がそんなことできたの?』
「ん?…あー、だ、誰でもいいだろ!そんなの!なぁ終一!」
「…う、うんそうだね」
『………?』
逢坂は違和感を感じ、天海を見た。天海は赤松にハンカチを貸しながら、逢坂の視線に気づき、本人から「言うな」って言われてんすよ、と答えてくれた。
『……へー……』
逢坂は頬に手を置き、その周りの反応をじっと眺めた。百田から解放された王馬が、ご飯食べて帰ろーよ!と騒ぎ始めたので、思考を一旦やめ、帰る準備をすることにした。
『…楓、最原、天海も来ない?』
「「「「え」」」」
王馬を含め、声をかけられた三人が絶句した。
『…百田くんも、良ければ』