第1章 ガラスの向こうの横顔
『…探してた?どうしてですか。…仕事の話?』
「ううん、個人的な話だよ。………簡単に言うとね……ボクはキミのファンなんだ。超高校級のロボット博士、逢坂雪さん」
『ファン?』
「うん、そうなんだ。だから話す時間が欲しいんだけど…なんだか隣の彼がいなくなれと言わんばかりの視線を送ってくるから、別の機会にお願いするよ」
「そうしてよ、逢坂ちゃんはこれからオレと購買に行かなきゃいけないんだからさ。邪魔しないでよね」
「わかったよ。…逢坂さん、今日の放課後は空いてる?」
『え?…空いて「空いてないよ、逢坂ちゃんはオレとの約束があるから」………ん?』
「約束?」
詳しく聞いてこようとした狛枝から逃げるように、王馬が逢坂の手を繋ぎ、急に走り出す。
『えっ、ちょっと危ない!』
「平気だよー!」
華奢な身体つきからは想像がつかない力だった。
王馬は物凄い駆け足で、二階から一階まで駆け下りていく。
逢坂が今より更に鈍臭かったなら、もつれて王馬もろとも転んでいるところだ。
想像すると冷や汗が出てきた。
購買まであと少しというところで、逢坂が足でブレーキをかけ、その急減速に気づいた王馬は、ようやく振り返ってくれた。
『あっぶない、転んだらどうする!』
「え。なんだー逢坂ちゃんは脳みそも足りてないし運動能力も雑魚なんだね」
『それ以上貶すともう口きいてあげないよ』
「またまたぁ、あんなめんどくさそうな奴から引き離してあげたんだから感謝してよね。連絡先とか聞かれて教えたりしたら、オレの部下が逢坂ちゃんの携帯勝手に機種変しちゃうから」
『部下?…っていうか、放課後に約束なんて』
「ひどい、忘れちゃったの?今日はオレと帰ろうって約束したのに」
『えぇ?してないし、部下ってなに?』
「あぁ、オレは悪の秘密結社の総統なんだよ。超高校級の総統なんだよね」
『……………闇社会の?王馬くんが?』
「そうだよ!ねぇねぇ、放課後の話に戻るけどさ、どこか寄り道がしたいなぁ」