第8章 見つめた時間
「だから周りのまともな生活してる人間を排除してるっていうの?…ふざけんな…雪は私たちとは違う世界で生きるべきなんだよ」
「どの世界で誰と生きるかは逢坂ちゃんの勝手だよね。春川ちゃんが勝手に施設の為に暗殺業に身を染めることになったのと一緒だよ!逢坂ちゃん悲しむだろうなー、春川ちゃんと一番の友達になったりしたせいで、春川ちゃんは施設に情が湧いて人殺しになんかならなきゃいけなくなったんだからさ!」
次の瞬間、懐にいなかったはずの春川がものすごい勢いで距離を詰めてきて、王馬の喉を両手で締め上げた。身の危険を感じた王馬は、春川の手首を両手で掴んで、下に向けて自分の腕に力を込めた。春川の拘束から逃れると同時に、宙返りをして彼女を跳び越す。距離を取ろうとする王馬に即座に反応した春川は、壁際に降り立った王馬を視界に捉え、そのスカーフを壁に叩きつけるようにして彼の襟元を掴んだ。
「かはっ!」
またギリギリと地面から足が浮くほど締め上げられ、王馬は、嫌なものを見る目で春川を見下した。
「は…っ…春川ちゃんがオレを殺したら、それこそ逢坂ちゃんはお前を許さないだろうね……」
「それでもいい」
「っ……ほんと、春川ちゃんって自己中で独善的で…救いようないよね…………わかったよ、オレにどうしてほしいわけ?このままだと本当に死体になって校内放送かけられちゃうよ…!」
「………」
「ねぇ……息が…も………」
ぐったりとする王馬を見て、春川が手を離し、王馬が地面に落下する。瀕死のふりをしていたのか、さも迷惑そうな顔をして、彼はしっかりと自分の足で着地した。