• テキストサイズ

【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第8章 見つめた時間




「天海ちゃんは勝手に失恋して勝手に傷ついただけでしょ。それに天海ちゃんが一緒にご飯を食べる相手がいないのは、逢坂ちゃんが天海ちゃんを独占してたせいって話になったよね?赤松ちゃんがオレに内緒話をしてきたのは本当だし、オレはありのままの事実を、横槍入れてくる赤松ちゃんに突きつけただけだよ」
『………。』


心のどこかで、王馬の言葉が嘘であってほしいという望みを抱いていた。しかしその願いはあっけなく、王馬の言葉によって打ち消される。
また深くため息をついた逢坂を促し、王馬が購買へと誘ってくる。逢坂はもうすっかり食欲など失せてしまっていた。一人で行って、と言うと、王馬は大仰に「えぇ!?」と驚いてみせた。


「…仕方ないなー。じゃあ教室で待っててよ、オレが逢坂ちゃんの分も買ってきてあげるからさ!」
『…そうする』


やけにあっさりと了承する王馬。逢坂は疲れ切ってしまい、その違和感に気づくことなく、赤松たちと鉢合わせないように別の階段に向かい、教室に戻っていく。
逢坂がいなくなった階段の昇降口。昼休みとはいえ、時間もちょうど休み時間の真ん中に差し掛かっており、元々人の往来が少ないその場には、王馬ともう一人、人の気配があった。しかし、気配はあれど、姿はない。
影に隠れている相手の空気を敏感に感じ取りつつ、その殺気の主に王馬が話しかけた。


「殺気までとばして、オレに何の用?…春川ちゃん」


ピリッと張り詰める空気を物ともせず、笑いながら階段の上を見上げる王馬。黒髪の長いツインテールを揺らし、音もなく王馬の背後に歩み出たのは、1-aに在籍している超高校級の保育士、春川魔姫だった。


「何がなんでも逢坂ちゃんの前に姿を現さなかったくせに、さっきからオレらのこと尾けてきてたよね?どういう心境の変化?」
「………あんた、どうして雪に近づくわけ?あの子の側にいられないくらい、自分が裏社会に足を突っ込みすぎてるってことぐらい自覚してるんでしょ?」
「側にいられないのは逢坂ちゃんが裏社会の人間じゃないからでしょ?ならそんな障害簡単に突破できるよ。逢坂ちゃんにこっちサイドへ来てもらえばいいんじゃーん!オレは卒業してからも、逢坂ちゃんを手放す気はないしね!」

/ 362ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp