第8章 見つめた時間
「そんな嘘ついたってバレバレだって。思ってたでしょ?ずっとさ。だってオレに言ってたもんね?高校に入って逢坂ちゃんとクラスが離れてホッとしたってさ」
「えっ……そ、そんなこと言ってない」
「言ったよ。赤松ちゃんが勝手に下手くそな嘘つくのは構わないけどさ、オレまで嘘つきにしようとするのはやめてよね!」
赤松は急に焦り始め、今まで逢坂に向けていなかった視線を一瞬向けてきた。そんなの嘘だよ、と反論する赤松の言葉は、いつも嘘をついてばかりの王馬の言葉よりも嘘っぽく聞こえる。
『……本当?』
「……お、王馬くんの嘘だよ。私はそんなこと言ってないし、あまり話したこともなかった王馬くんにそんなこと話すなんてあり得ないでしょ?」
けれど、逢坂はしっかりと、王馬が突然登校時のメンバーに混ざってきた時の会話を覚えている。突然髪を下ろしてきた赤松と、オレの言った通りだったでしょ、と自慢げに話した王馬。
『ーーーー。』
ーーー逢坂ちゃんとお揃いだね。もしかして真似したの?
最原のことを、楓が気になりだしたのはいつのことだっただろう。確か、自分が学会準備をしているうちに二人は仲良くなっていて、いつの頃からか、三人で一緒にいるようになった。
それまでも楓とはクラスで最原の次に話す仲ではあったが、最原と楓が話すようになってから、一緒にいる時間は増した気がする。
天海を邪魔と評した王馬の言葉が頭に浮かぶ。
逢坂は一瞬、息を詰まらせて、顔色を変えないように慎重に、深く呼吸をし直した。
『…もしかして、邪魔だった?中学の頃から』
「そ、そんなことないよ!変な言いがかりやめてよ王馬くん!」
「変な言いがかりつけてきたのはそっちだよね。せっかく逢坂ちゃんと付き合えるようになって幸せの絶頂にいるオレに、一番の理解者面してわざわざ水さしてくるからさ…」
オレ、人がつく嘘は大嫌いなんだよ。そう言う王馬は暗い顔で、口が裂けたような笑みを浮かべる。赤松はその表情にゾッとし、逢坂の表情に気づくことができなかった。
「雪、やっぱり…私は王馬くんと付き合うのオススメしないよ」
『……そう』
「そうじゃなくって!」
『購買行きたいんだよね。どいてくれる?』
「………え?」