第8章 見つめた時間
そっか、そういうことなんだね、と赤松は二人の間で繋がれた手を見て、眉間にしわを寄せた。その視線を受けて、自然につながれていた手に逢坂が気づき、王馬の手を振って離した。なんで!と文句を言ってくる彼を無視し、仁王立ちで進路を塞ぐ赤松を見た。
『どうしたの?楓、そんな顔して』
「赤松ちゃん、オレたちお腹すいてるんだよねー。そこどいてくれない?」
「雪、本当に王馬くんと付き合うの?」
『……え?本当にってどういうこと。っていうか、ケーキ渡してないの?』
「こんなこと言いたくないけど、王馬くんは雪にとって一番側にいた友達の天海くんを厄介払いするような人なんだよ?そんな人を彼氏として付き合っていくって、思ってるよりも大変だよ!」
「にしし、オレを目の前にしてよくそんな苦言口にできるよねー。赤松ちゃんって案外肝が座ってて需要ありそうだけど、少し自分に盲信的なところがあるよね?」
「…なにそれ、どういう意味なの?」
「自分が間違ってないと思ったら人1人率先して殺しそうな危うさがあって、危ない人種だよ。でもオレはそんな偽善的な人殺しに赤松ちゃんが将来なったとしても、つまらなくないとは思うよ!」
「私の話はどうだっていいよ!雪、王馬くんと食べるんじゃなくて、私と最原くん、天海くんも混ぜて食べようよ」
「嫌だよ、オレだって暇じゃないんだから。逢坂ちゃんと居られる時間は大切にしたいんだよね…あんまり邪魔するなら、三人とも学校にいられなくしてやるくらいの心づもりってことは知っておいたほうがいいよ」
「ほら、また思い通りにならないとすぐ脅してくる!」
「嘘だよ!やだなー赤松ちゃん、オレが大切な彼女の友達にそんなことするわけないじゃん。冗談が通じないんだからー」
赤松は、通行人の目を気にすることなく王馬とのデッドヒートを繰り広げる。おろおろと仲裁をする逢坂だったが、二人は口論を止めようとしない。
「赤松ちゃんさ、他人の心配してる場合?願い叶って最原ちゃんが逢坂ちゃんを諦めざるを得なくなったんだから、少しはオレに感謝してよね!」
「そ、それとこれとは話が別だよ!私は最原くんに傷ついてほしいなんて思ってたわけじゃないし!」