第8章 見つめた時間
そう言った彼は、一向にソファから動こうとしない。数秒の沈黙の後、逢坂は首を傾げた。
『…帰るんじゃないの?』
「嘘だよ、嘘に決まってるじゃん!帰ってなんかやらないもんねー!」
『なんだぁ』
「あからさまに残念そうな顔しないでよー。嫉妬するならさ、もっと可愛げある方が万人ウケするんじゃないの?」
『ウケなくていいから』
「嫉妬したのは事実なんだね!」
王馬が笑いかけると、逢坂は少し目を逸らして、ソファに腰掛けた。
「あー楽しかった!ねぇ、喧嘩ごっこの次は何して遊ぼっか?」
王馬は大きな目を逢坂に向けて、号泣など何もしていなかったかのように楽しそうにしている。先ほどまで崩れに崩れていた表情が全て嘘だったのかと思うと、逢坂は彼の面の分厚さにため息をついた。
『……なにしよっか』