第7章 嘘つきの本当
鍵をかけるように言ってあります、ということは、鍵がかかっているところさえ見つけてしまえばこっちのものだ。スカーフの中に入れていたマイピッキングセットを片手に携え、逢坂が寝ていそうな場所を思い浮かべた。
(……普通に考えて、キー坊がオレの隣で寝てたんだから、逢坂ちゃんは……)
二階の、角部屋。そこは本来キーボの部屋だ。ドアノブを回してみると、どうやら鍵がかかっている。こんなの楽勝だよ、と呟きながら、ピッキングで部屋のドアを開けた。しかしそこに逢坂はいない。仕方なく他の部屋を片っ端から開けて、彼女がどこにもいないことに気づいた。最後に考えられるのはそこしかなく、王馬はリビングにあるソファーを覗いてみた。二人がけのソファの上で、逢坂が横になっている。
一緒に眠る気満々だった王馬としては、それは誤算だった。ソファには一人しか眠ることができない。どうにかして逢坂をベットに移動させなければ。
「……逢坂ちゃん、風邪ひくよ」
声をかけても、目を覚ます気配はない。どんなつまらなくない方法で起こしてあげようかと算段を考えていると、テーブルの上に置いてある紙袋が視界に入ってきた。
そういえば、と王馬はテーブルに近寄り、紙袋から箱を取り出し、ようやくチョコと対面した。
(………!)
数種類詰め合わせた、と言っていたが、そんな簡単なものではなかった。一口サイズのチョコレートやチョコケーキ、オペラやティラミス、ミルフィーユ、ガトーショコラなど、5.6種類はあるチョコレートたちが綺麗に並べられている。赤松と話していた最原の話を盗み聞きした限りでは、トリュフを数個、天海と最原にあげただけだったはず。
(…赤松ちゃんがオーブン壊して、それを直してからこの量のケーキ………まさか寝てない?)