第7章 嘘つきの本当
静かに眠っている逢坂の寝顔を見て、王馬はぼんやり、そんなことを考えた。目の前にあるのは、逢坂から王馬への気持ちを表したものだ。少しだけ、昼間から喧嘩腰だった自分が悪かったのではないかと反省しそうになったが、チョコを食べて考えないことにした。
(……美味しい)
逢坂の寝顔を見ながら、向かいのソファに座ってチョコを夜中に貪る。よくよく考えたら、一昨日から何も食べていなかったのではなく、ここ3日ろくなものを口にしていなかった気がする。空腹に甘いものはよく効いて、シチュエーションも手伝ってなのか、今まで食べてきたものの中で一番美味しいバレンタインチョコだと感じた。彼女は、贈り物をするのは嫌いと言っていたのに、ここまで頑張ってくれるとは思ってもみなかった。
ーーーー王馬が好きだよ
ふいに思い出した彼女の言葉。とっくに落ち着いたはずなのに、記憶に蘇ってくるだけで、また身体が熱く感じ始めた。ケーキを貪り続け、全て食べ終わった後、王馬はようやく空腹から解放された。手を洗ってきて、また逢坂を起こそうと思ったのだが、逢坂の寝顔を見るのは久しぶりな気がして、見惚れてしまった。
「………逢坂ちゃん」
彼女の唇に、自分の唇を重ねた。前のキスとは違い、胸にナイフを刺し込まれる感覚はない。なのになぜか、泣きたくなってくる。苦しくて、切ない。どうしようもなく、彼女を欲してたまらない。
馬乗りになって、首を締めようと肌に触れた時
彼女と目が合った
『……なにしてるの?』
オレはその視線を独占していることに満足して
おはよ、とただ一言囁いた