第7章 嘘つきの本当
目を覚ますと、真っ暗な部屋の中だった。すぐに頭の中の記憶を振り返り、ここがどこか、いま自分がどういう状況で眠りについていたのか思い出す。手足は自由で視界が暗いのは夜目が効いていないせいだと確認したところで、ようやく現在地、自分が置かれている状況を把握した。ほんの数秒の確認行動。考えを巡らせることを優先し、止めていた呼吸を再開する。
(……あぁなんだ…逢坂ちゃんの部屋じゃん)
視界が回復したわけではなかったが、部屋に甘い匂いが漂っている。この匂いはしっかりと覚えているから、間違えるはずはなかった。
「……!」
自分の隣に、人の気配を感じる。目が覚めてからまだ十秒も経っていないが、気づくのが遅すぎた。どれだけ警戒心なく眠ってしまっていたのかと自嘲するのと同時に、ベットまで連れてきてもらった時の記憶も思い出してしまい、自分のダサさに笑えてくる。
しかしすぐに心機一転し、隣に眠る存在に期待した。
(……抱きしめるくらい、いいよね。よし!)
勝手に結論づけて彼女を抱きしめる。しかし想像よりもゴツゴツとした触り心地に、瞬間的に叫んでいた。
「なんでキー坊なんだよ!ここは逢坂ちゃんでいいだろ!」
「わっ…………………なんですか…まだ充電中です…再起動にはエネルギーを使うんですからね」
キーボは大声を出した王馬に、暗闇でも光る目で、鬱陶しそうな視線を送ってくる。その迷惑そうな態度にイラつき、ベットから降りた。
「…喉乾いた。何か飲んでこよっかなー」
「といいつつ、博士の所に行くのではありませんか?無駄ですよ、博士には鍵をかけてもらいましたから!」
「……へー?あ、オレのスカーフどこ」
「枕元にあります。あまり……歩き回らないでくださいね……」
「わかってるよー心配性だなぁキー坊は」
「…心配性ではなく、それは王馬クンが………………」
ブゥン、という音を立てて、キーボの目の光が暗くなる。王馬がまた起動させてしまったせいで、充電を邪魔してしまったらしい。
「……なるほどね」
タイミングとしては、これ以上はない。
「にしし…」