第7章 嘘つきの本当
恋人に向けるとは思えない声の低さで、王馬が脅迫してきた。腰に巻かれた彼の腕は微かに動いただけでも確実に逢坂の身体を締め上げてくる。
『…プァンタを…この方に…』
「はっはい!王馬クン、博士を分断しようとするのはやめてください!」
「人間誰もがロボットのお前みたいに身体分離できるわけじゃないんだよ?ただ抱きついてるだけじゃん」
「ロボット差別ですね…博士は女性なんですから!然るべき団体に訴えますよ!」
「あははは、ロボットが裁判なんて起こせるわけないじゃーん!」
「一度ならず、二度までも…!許しません!」
『プァンタを…』
「はい!待っていてください!」
腰の圧迫に耐えながら、逢坂が王馬を見つめる。彼はぴっとりと逢坂の背中に抱きついたまま、吐息のかかる距離でじっと見つめてきた。
「オレ、逢坂ちゃんの部屋に行きたいな」
『…二人きりになりたいってこと?あんなに喜んで駆け寄ってきたキーボを放置はできないてててて嘘嘘、王馬くんの方が大切だなぁー、でもどうしようキーボが一人になっちゃあたたたチョコ捨てるよ!』
「じゃあ今日オレを泊めてよ」
『はい?…いつも勝手にリビングで寝ちゃってるよね、寝不足な日は特に』
「リビングじゃなくて、逢坂ちゃんの部屋で一緒に寝させてよ」
『………それは……手錠で縛り上げて拘束した上で構わないなら』
「構うよ!なにそれ、オレはそんな格好にされた状態で一夜を過ごすなんて、一体どんな楽しみ方すればいいのさ!」
『うーん…捕まった怪盗と探偵的なシチュエーションかな』
「探偵は手錠なんか使わないよ」
『…じゃあ縄で縛るとか。ネクタイで縛るとか』
「えー…」
『……?』
王馬の言葉数が少なくなっていくのと同時に、反論してくる元気もどんどん失われていくように思えた。戻ってきたキーボがプァンタを王馬に差し出し、彼はそれをがぶ飲みし始める。のど痛くないのかなぁと考えながら、逢坂は外れた王馬の片腕を引いて、彼お気に入りのソファに座らせた。
『…眠いんでしょ』
「眠くない」
『寝ていいよ。チョコは置いておくから』
二人きりになりたかったわけじゃなくて、ベットに行きたかったらしい。プァンタで目を覚まそうとしたのか、俯いた彼は喉を押さえてプルプルと震えている。