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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第7章 嘘つきの本当




表情筋が活躍してくれるようになったのか、彼はパッと手を離して、さっきのような仏頂面に戻った。


「……いらない」
『…そう?じゃあ、帰って一人で食べる』
「………………………………………………………………………………………………」
『嘘だよ、嘘だって』
「へ、へぇー…なんだ嘘か、焦ったぁ…いや、べ、別に嘘じゃなくても平気だけどね…」
『そんなに動揺しないでよ』
「動揺なんかしてないよ!」
『食べたいの?食べたくないの?』
「んー、別に食べたくはないかな。でも逢坂ちゃんがどうしても食べて欲しいっていうなら食べてあげなくもないよ!」
『じゃあいいや。一人で食べるよ』
「この程度の嘘、真に受けないでよ!食べたいに決まってるじゃん!逢坂ちゃんの本命チョコでしょ?しょうがないなぁ受け取ってあげるかーこれ以上捨てられた犬みたいな目で見られても困るしね!」
『うん、じゃあ鞄取ってくるね』
「……………え?」


逢坂は王馬に背を向けて、教室を出て行った。その彼女の背を呆けて見つめていた王馬だったが、鞄を引っ掴んですぐに駆け出した。
1-bに入ると、彼女はちょうど窓際の自分の鞄を手に持ったところだった。


「……オレの話聞いてた?」
『なにが?聞いてたよ』


彼女は何も風を遮るものがない寒そうな首元を気にした後、王馬の立ち尽くしている扉まで歩いてきた。夢野の紙袋を王馬の手に確認し、安心したように頭をポンポンと撫でてくる。


『今日、家来る?』
「……行く」
『良かった、一緒に帰ろ』


彼女は王馬に手を差し出した。王馬はその手をじっと無表情で眺めた。


「なんで?」
『……繋ぐの嫌?』
「嫌なわけないじゃん。なんでオレの言葉に反論しないの」
『……間違ってないからだよ』
「違うよ、そう答えて欲しいんじゃない。これだけ待たせたんだから誤魔化さないでよ」
『……』


なんで、と彼はまた繰り返す。
逢坂はその瞳を見つめて、穏やかに笑った。


















『…王馬が好きだからだよ』















優しく笑う逢坂に、今すぐ飛びつきたかった。けれどそんなことをしたら、また子どものように頭を撫でられてしまう気がして、我慢した。緩みそうになる口元を必死に堪えて、無理やり不機嫌そうな声を出す。

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