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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第6章 本当の嘘つき




階段の踊り場には、僕と、逢坂さんの二人しかいない。階段の上から、近くの廊下を駆ける人の足音がする。不自然に押し黙った二人の横を、何人かの生徒が通り過ぎて行った。


『……えっ?あ、あの…』
「…傷つけるようなことを言った自覚はあるよ。本当にごめん。それに、許してもらえるのかどうかも聞いてないうちから、こんな話をするのはおかしいかもしれないけど…でも、逢坂さんが嫌いだから応援してこなかったわけじゃないんだ。むしろ…」


その言葉の続きを言おうとして、さすがに恥ずかしくてやめてしまった。少し彼女から視線をそらして、また彼女の様子を見た。


(……あれ)


案外、悪い反応ではなかった。逢坂さんは顔を真っ赤にして、俯いてしまっている。


「……逢坂さん?」
『あっ、はい。あっ、違うよ、「付き合わない?」って言葉に「はい」って返事したわけじゃなくて名前を呼ばれたからはいって答えただけで』
「…うん、わかってるよ」
『……ご、ごめん……なんか、最後の告白でよくわからなくなっちゃって、最原を怒る気になれないや…謝ってくれてるのにごめん…』
「い、いや…そんな。逢坂さんが謝る必要ないよ。……今、返事できそう?」
『………っ』


彼女は僕の目を一瞬だけ見て、また俯いた。そしてか細い声で、ごめんなさい、と返事をした。予想していた答えだ。それほどダメージは受けないだろうと思っていたものの、結構ズシリと重くのしかかるものがある。


「そっか…急に変なこと言いだしてごめん」
『…う、ううん…こっちこそ…今まで気づかなくてごめん』
「……言わない僕が悪いんだよ。逢坂さんは悪くない」


王馬くんと付き合うの、と聞きたいような、聞きたくないような気持ちが生まれた。けれど、逢坂さんの真っ赤な顔を見ていたら、そんなこと聞きたくなくなってしまった。


(……今だけは、僕のことできっと頭をいっぱいにしてくれてるんだろうな)


予鈴がなって、周りを歩いていた生徒たちの数が急に減った。あと数十秒、あと数分、何時間でもその表情を見ていたかったけれど、彼女が困っているのもわかっていたから。二人きりに戻った踊り場で、僕は口を開いた。


「……じゃあ、僕は教室に戻るよ。あと数分で彼を探すのは大変そうだけど、がんばって」

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