第1章 ガラスの向こうの横顔
「あはは、最原君、そこはそう思うじゃなくて可愛いよって言ってあげるとこっすよ」
「え、……えっと…似合ってるよ…」
「えー、そんなによくないよ。逢坂ちゃんの方が大人っぽいし美人」
ズバッと切り捨てた王馬の言葉に、赤松は少ししゅん、とした。
そして笑顔を作り直して、ばつが悪そうにその場を取り持とうとした。
「あー…やっぱり、雪の方が似合うよね!」
「…ちょっと、なんてこと言うんだよ。赤松さんだって似合ってる」
「似合ってはいるけど、どっちかって言えば赤松ちゃんはポニーテールの方が良くない?なんで今更って感じだよ」
「別に髪型ぐらい本人の気分で変えたっていいだろ」
「だ、大丈夫だよ最原くん!それに多分王馬くんのことだからすぐ「嘘だよ!」って…」
「え?今のは本当だよ。赤松ちゃんより逢坂ちゃんの方が髪下ろしてるのは似合ってるし大人っぽいし美人」
「うぐ…結構きつい指摘が…」
「それは違うよ、赤松さんだって似合ってるし可愛いだろ!」
にしし、と王馬が笑った。
笑ってる場合じゃないだろ、と怒気を強めた最原。
しかし、そんなに憤っている最原を鑑賞するかのように、逢坂と天海の二人が発言しないことに違和感を感じた最原は、言葉をつまらせた。
そして赤松の表情を見て、数秒遅れで、彼女と同じように赤面した。
「あ、ありがと最原くん。でも大丈夫、ちょっと恥ずかしいから…」
「……あ、いや…ご、ごめん」
「謝ることないよ、嬉しかったよ!…えへへ、最原くんが似合ってるって言ってくれるならそれでいいや」
「いいの?あんなこと言われたのに」
「うんうん、やっぱりオレが言った通り、赤松ちゃんは髪おろしてた方がいいよね!子どもっぽさが抜けてすっかり高校生って感じだよ!」
「王馬くん…どっちが本当なの」
「えー?何言ってるのさ、昨日、赤松ちゃんにその髪型の方が似合うよって言ったのはオレじゃん」
「そこは本当だったの?そこからもう嘘だったのかとか考えちゃったじゃん!」
「嘘だよ!」
「ええっ!?だったら、その言葉に乗せられて髪を下ろしてきた私って…」
「にしし、昨日の言葉は本当だよ。でも結果的に良かったじゃーん、可愛いだってさー最原ちゃんも素直じゃないよねー」
「「……!!」」
また赤面する二人をからかいながら、楽しそうに王馬は笑った。