第6章 本当の嘘つき
その代わり、彼女は少し困ったように、視線を右斜め上にそらしながら、問いかけて来た。
「ねぇ最原くん、キミは逢坂さんの話信じてる?」
「………え?…ロボットの話?」
「一番近くにいるんだもん、信じてないわけないよね。逢坂さんは今、人に限りなく近いロボットの研究をしてるんだって」
「人に限りなく近いロボット?」
「家族や友達…そういう色んな人の心の隙間に寄り添ってくれるロボット。本当に実現できちゃったらさ、世界が変わるよね。私は逢坂さんの話、本当だったらいいなぁって思うんだ。彼女の才能は確かに世界レベルだしさ」
「……待って、逢坂さんがそういうロボットを欲しがってるってこと?」
目を輝かせる赤松さんの話始めの言葉に、気を取られすぎた僕は、彼女が発した重要な手がかりを聞き逃した。だから、食い入るように赤松さんに問いただした。彼女が何を欲しているのか。知っているのなら、教えて欲しかった。これ以上空想の世界に沈んでいく彼女を、引き止めたかった。
「…え?……あぁ、うん。インスピレーションを受けたのは逢坂さんの生い立ちみたいなんだけど…何が自分にきっかけをもたらすかわからないから、人生ってわかんないものだよねー」
(……なんだそれ)
家族や友達がロボット?
そんな話をどうして赤松さんは楽しそうに話すんだろう
なにがロボットだ
人に似ていたって機械は機械
友達にも家族にもなれない、ただのガラクタじゃないか