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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第6章 本当の嘘つき




彼女と一緒に帰りながら、どうしてそんな目に遭ったのか理由を聞いた。彼女と言葉を交わすのは、それが初めてのことだった。彼女はどうやら孤児らしく、大人の特別な保護を受けて生活していると教えてもらった。同じクラスの仲良くしていた女子グループからいじめを受けるようになったのは、つい最近のことらしい。それまでは僕と違い、それなりにうまくやれていたイメージが確かにあったから、納得がいった。


「でも、どうしてそんな急に?」
『嘘つきだと思われてるんだよね』
「え?」
『本当のことしか言ってないんだけどなぁ』


全く悲しくなさそうな顔をして、彼女はさも悲しげな声を出した。






嘘つきだと思われている。







彼女のその言葉の意味は、一緒に過ごす時間が増えるたびに理解できるようになっていった。国の援助を受けてロボット研究をしている。自分は小学生の頃から機械工学に強く、大人からの依頼を受けてロボットを製作してきた。初めはスポンサーの援助で暮らしていたが、今はそれを受け取らなくとも生きていける程度には自分で稼いでいる。彼女の口から出てくる言葉は、まだ中学にあがったばかりの子どもに理解するには難しいものばかりで、僕でさえその話を疑った。それでも、僕は彼女と一緒にいるようになった。彼女が嘘か本当かわからない話をしてくるのは、自分の生活に関してだけで、その他のことについて嘘をついている素ぶりが見られなかったからだ。


「おい最原、お前ら付き合ってんのか?」
「え。ち、ちがうよ、友達なだけ」
「なんだー焦らせんなよな!」


それでも、登下校を一緒にして、昼ご飯を食べたり、忘れものをしたらお互いに一番に頼った。目を惹く彼女と連れ立って歩く僕の姿は他の男子生徒からすると異様だったらしく、彼女との関係を問いただされるのを手始めに、僕はクラスの子達とそれなりに話すようになっていった。彼女のおかげで僕の周りには人が増えていくのに、彼女の周りには、一向に人が集まらなかった。そんな現状を彼女は特に打開しようという気にはならないらしく、たまに僕にロボット研究の話をしては、曖昧な返事を返す僕の反応を静かに待った。
穏やかで、なんの変哲も無い彼女との日々。彼女が笑うと、僕も笑いが溢れて。彼女が酷い目に遭うと、駆け寄って、隣に寄り添った。

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