第6章 本当の嘘つき
「…え?…赤松さんは今、委員会なんだ」
「ふーん。最原ちゃんが赤松ちゃんの気持ちに知らないふりを続けるのってなんで?他に好きな相手でもいるの?」
「…なんの話?知らないふりって、そんなことした覚えはないけど」
「嘘くさいなぁ…本当の本当に知らないの?」
「赤松さんの気持ちってなんのこと?」
「それはオレの口からは言えないよ!委員会から帰ってきたら聞いてみれば?「僕と逢坂さんがいるのと、僕と二人でバレンタイン過ごすの、どっちがいい?」って」
「王馬くん、それよりさっきの話、天海くんが傷つけばいいと思って話したんでしょ?どうして知らなくてもいいこと話したりするんだよ。天海くんは別に、キミに嫌なことをしたわけじゃないだろ?」
「えーひどいのは最原ちゃんじゃん!オレがそんな性格の悪いマネすると思う?」
笑って誤魔化そうとする王馬くんを睨みつける。彼は少し笑って僕の様子を見ていたけれど、すぐに真顔に戻って机に肘をついた。
「何が悪いの?今日はバレンタインなんだよ。好きな子を独り占めしたいって思っただけだよ」
「だからって…天海くんを傷つけていい理由にはならないだろ」
「なんで?」
「……なんでって」
「あのさぁ、オレって好きな人には首を絞めてでも振り向いてもらいたい性格なんだよね。だから正直なところ、未練がましい天海ちゃんとか、邪魔な最原ちゃんには出来る限り早々にリタイアしてもらいたいんだ。そろそろ二人のお邪魔虫度がカンストしちゃうしね」
「嘘ついて周りを迷惑させてるキミに言われたくないよ」
王馬くんは何があっても今日逢坂さんと二人で過ごしたいらしい。彼が彼女に執着しているのは知っているけど、呼吸をするように嘘をつき続ける彼が、彼女を大切に思っているなんてこと、僕には信じられなかった。
「人のこと言えるの?」
「……え?」
「最原ちゃんってさ、自分だって嘘つきのくせにオレのことゴミでも見るような目で見るよね」
「……っな、そんなわけ…!」
急に言われた鋭い指摘に、内心どきりとした。彼はニコニコと笑っているように見えるが、彼の本心はどこにあるのか、全くわからなくなる。