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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第1章 ガラスの向こうの横顔




「んー、逢坂ちゃんなら何されてもいいよ。ただし人目につかない薄暗い二人きりの個室でね」
『限定条件がすごいね』
「あーぁ、こんなに身体的特徴を揶揄されるんなら素直に一人で登校しておけばよかったなぁ……逢坂ちゃんにはがっかりだよ、もう友達になりたくない」
『変わり身が早いな。二人きりの閉鎖空間でなら何されてもいいって言ってた王馬くんはどこへ行ったんだろう』
「さっきのは嘘だからね」
『さっきのってことは「身体的特徴を揶揄されたのはどうでもいい最原ちゃんを誘って正解だった、逢坂ちゃんと友達になりたい」って意味だよね。くっはー照れるなぁ』
「嘘じゃん、全然照れてないよね。もしかしてそういうの言われ慣れてるの?」
『うん、実はもう何度も言われてるんだ』
「え、本当?」


ちょうど信号待ちをして、三人が立ち止まった時だった。
逢坂が人差し指を自分の口元に立てて、王馬たちの方へ、くすくすといたずらっ子のように笑った。


『嘘だよ』


(………逢坂さん、可愛いなぁ)


王馬に向けられたその笑顔を見つめながら、最原がぼんやりとそんな感想を抱いた。
信号が青に変わり、逢坂が最初に歩き出す。


「…王馬くん?」


最原も歩き出そうとして、気づいてしまった。
突然黙りこくってしまった王馬の視線が、今や逢坂だけに向けられている事に。


(…え?)


彼の瞳の輝きは、ショーケースに入ったオモチャを見つめる子どものように眩しい。
まるで、欲しくてたまらないものを見るような、大好きなものを見つけたような眼。


『王馬くん?』
「ーーーーっ……あ、信号見てなかった」


逢坂が振り返りそうになった時、ようやく王馬は口を開いて、最原の横を通り過ぎ、逢坂の方へ駆け寄って行った。
ほんの数秒の心の揺らぎ。
普段誰にも隙を見せない王馬の本心が、一瞬だけ透けて見えた気がした。
どうして彼が今朝最原の前に現れたのかも。
授業中ずっと楽しそうに、何かがあるわけでもない外を見つめているのかも。
超高校級の探偵の勘なのか、最原は、出来ることなら気づきたくないようなことにまで気がついてしまった。



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